制作年/日本公開年:2005年
ジャンル:戦争・ヒューマンドラマ・実話が基
視聴媒体:レンタル
監督:クリスチャン・カリオン
あらすじ
第一次世界大戦中、今から108年前(2022年現在)の1914年のクリスマスイブに起きた実話を基に制作された奇跡の物語。
『ドイツ』対『フランス&イギリス』は惨状を呈する争いに突入。
最前線に送られた夫の為に会いに行く妻。
その最前線で戦う歌手、神父、床屋・・・様々な職種の男達。戦争が無ければ決して出会うはずも無く、奇跡も悲劇も見る事はなかった。
それぞれの視点で思い描かれる、苦しく切ない、でも確かに存在したこの世で最も美しい人間の心を表した映画。
この物語を見ても、まだ争いを続けますか?
いーぬ。的総評
5段階評価中
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「今の私、本当に幸せ?後悔しない?」 自分の人生を振り返った時 問いかけた言葉は 至極単純なものだった。 はじめまして。日向端いーぬ。と申します。 挨拶とサイト理念 「自分の為だけに用意された人生」 ...
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注意
以下、ネタバレ含む感想がありますのでお気をつけ下さい。
ざっくり相関図と主要人物
まず私が無知で、軍服に詳しくないと言う事もあってか、今どっち側の軍の話なのか少し分かりにくい所があったので、ざっとまとめてみました。
何度も観ていたら分かってくるのだが、一回見ただけでは歴史に詳しい方じゃなければ難しいかも。
主要人物
ドイツ軍
① ホルストマイヤー中尉(役:ダニエル・ブリュール)・・・ドイツ軍を指揮する泰然自若な将校。後に神父の影響でI'm Dreaming Of Homeを口ずさむ場面がある辺り、冷酷とは程遠い、非常に良き指揮官。奇跡の決断をした一人。
② ニコラウス・シュプリンク(役:ベンノ・フユルマン)・・・テノール歌手でありアナの夫。アナ到着後は、歌う意味を思い出し、全ての人に魂を込めて歌を捧げた。奇跡を起こした一人。
③ アナ・ソレンセン(役:ダイアン・クルーガー)・・・ソプラノ歌手であり、ニコラウスの妻。夫に会いたいが為に最前線に赴くタフな性格。到着後は全ての軍の為に、すべての人の為に歌を捧げる。奇跡を起こした発起人。彼女の登場でその後の奇跡が生まれる。
イギリス軍
① パーマー神父(役:ゲイリー・ルイス)・・・衛生兵として戦争に参加。(させられた?と思われる。)戦争が始まる事への憂慮を示し、まるで惨劇が始まる事を知っていたかのような表情が印象的な冷静で慈悲深き人。ラストは陰謀により、信仰を捨てたか協会を辞めたかと思われる。バグパイプで奇跡を起こした一人。
② ジョナサン(役:スティーヴン・ロバートソン)・・・兄と共に自ら望んで戦争に参加。ドイツを倒し、明るい未来を夢見る青年。悲劇を味わい、悲劇を起こした一人。
フランス軍
① オードゥベール中尉(役:ギョーム・カネ)・・・父が将軍の為、今にも重圧に押し潰されそうなフランス軍を指揮する将校。優しい性格が災いし、自分の部下がどんどん倒れて行くさまに、心が折れそうな様子。奇跡の決断をした一人であり、悲劇を味わった一人。
② 目覚まし時計を持つ兵士:中尉を側で支え続ける側近。参謀というより良き話し相手といった感じ。朗らかな青年。
【ココが原点】教育が生んだ悲劇の固定概念
まず冒頭で、各国、子供時代に教わってきた敵国の非倫理的な人間性というのを教わってきた
という事を思わせるシーンから始まる。
純粋な子供に何を言わせているんだ・・・
かわいい子供から出た発言とは思えない教育が、成長するにつれて自然に
”戦争することが当たり前な事”
な考え方になっていってしまうのは、至極当然だと思わせるシーンです。
悲しい時代背景なのが窺えます。
イギリス(スコットランド軍)側視点では、
やがて大人に成長していく中で、宣戦布告したとの知らせに喜ぶ若い兄弟(スコットランド軍)とは対照的に
”神様、何故ですか?”と言わんばかりの表情の神父さま。
戦争の惨さを本質的に知っていたのだと思う。
また、兄弟も悪気は無く、戦う=勝利すると確信し、解放、革命する一員になれると信じての感情だったのだと思います。
理由も無く、絶対に勝てるという意志は若さ故か・・・
何の正確な情報も無い中で、自分で深く考え、自らの意志で信念を決めるというのはこの時代では今よりずっと素晴らしい事だと思います。
だからこそ、神父さまのこれから先の事を考えた悲しみを表現した表情がとても印象的でした。俳優さんがとても上手いですね。
いつだって振り回される側の人間は、魂から涙を流す。
いつの時代も。
【ココが泣ける】神父の”音”から始まった奇跡「I'm Dreaming Of Home/故郷の夢」
恐らく開戦してから少し経ったであろう頃、物語は序盤から局面を迎える事になる。
フランス側主観から戦闘は始まるが、つい今まで話していた仲間が次々と倒れて行く光景に、戦争の指揮官としての肩書が如何に重く、如何に自分が無力な事か、消える瞬間の部下と”目”を合わせた時に思ったのではないかな。
人の心を忘れていなかったこの人はえらい。と同時に憔悴しているように見える。きっと優しすぎる人で、命令を下せるほどの冷酷さは持ち合わせてないのだろう。
何度もこの地獄のような光景を目の当たりにしすぎて、心が限界に達しようとしていたのかもしれない。
”目覚まし時計”の兵士が居なかったらとっくに壊れていたでしょうね。
慌ただしく、激動する塹壕の中や銃撃戦の様子がよく分かるシーンは見所の一つでしょう。
正に息をする暇もないのが分かります。
あ~最前線ってこんな感じなんだ・・・・切ないなと思わずにはいられなかった。
一方友軍のスコットランド軍では、兄弟に悲劇が襲う。
この悲劇が後に更なる悲劇を生むことになる。
ジョナサン、気持ちは分かるが誰も悪くないんだよと思ったシーンですね。
こうなる事を一切予想してなかったような雰囲気もしましたが・・・。現実を思い知ったというところでしょうか。
それにしてもこういう極限の状態の時、(特にサバイバル)ではめちゃくちゃ友情愛の表現が激しいですよね。例えば抱きしめ合ったり。私は家族がもし亡くなりそうな時、抱きしめてあげれるのかな?もちろん気持ちはあるのですが、何分気恥ずかしくて勇気がいるタイプでして。昔、友達が悲しいめにあって、泣いている時勇気がでない事があったのを思い出してしまいました。あの時抱きしめてあげれていれば、きっと悲しみが早く和らいでいたのではないかと勝手に思っている所でして。
ここでは命がかかっているので比べるものではないですが、もうちょっと自分の気持ちに正直に、言葉だけでなく行動で示してもいいのかなと学びましたね。恥ずかしがってる場合じゃないね。後悔しない為にも。
そして日付は1914年、12月24日。
クリスマスイブを塹壕の中で迎える各軍。日本人からしたら祝ってる場合じゃなくない?と思うシーンですが、停戦してまで大事な習慣が世界共通の事でほんとによかった。だって隙だらけだもん。
寒々しい夜空の下で、どこからかバグパイプの音が響き渡る。
それはイギリス軍、神父が奏でる「I'm Dreaming Of Home」
この映画の為だけに作られたオリジナル曲で名曲です。
兵士たちは音に合わせ勇ましく歌っていますが、何と悲しくて優しいメロディーなのか・・・。
慣れ親しんだ曲を仲間と合唱するのは楽しく、協調心が上がって良い事なのに
”綺麗な景色の中で育ったあの頃に帰りたい”と聞こえてきて辛い。
どんなに勇敢な人でも家に帰りたいに決まってる。
バグパイプの音色も相まって、笑顔の男たちと歌声と歌詞が複雑に絡み合っていてこのシーンは切なくて泣けます。
戦争さえなければ、いつも通りの幸せな一日が始まるというのにね・・・。
ハンカチで涙を拭きつつ、サウンドトラックがほしいと願う私・・・
【ココに感動】人として生まれてきた意味は歌で人を感動させるため「きよしこの夜」の奇跡
イギリス軍の歌声、賑やかな雰囲気を聞き、ドイツ軍、テノール歌手が「きよしこの夜」を自軍に披露。
誰もが知る世界共通の曲に、その場に居た多くの兵士が感動。
それは国境を越え、人が一つになった瞬間。
バグパイプの音がテノール歌手に届いた時の表情に注目してみて下さい。
”届くんだ”
と思ったのか、ただそこに居る全員に向かって歌う姿は圧巻です。
私は戦う意味を無くしたこの瞬間がたまらなく好きです。
敵の歌声で笑顔になるって素敵ですよ。決して姿を見ようとせず耳だけを研ぎ澄まし、涙を浮かべて微笑む人は、一体何を思ったのだろう。故郷の事だろうか?家族の事だろうか?恋人だろうか?それとも人間とは共感し合えると思ったのだろうか?涙目の兵士達を思う度、このシーンには何度見ても感涙します。
私、この辺りから泣いてばっかだな・・・・。ティッシュもお忘れなく用意を
【ココは感慨深い】大事な人を奪われた者と相反する奇跡の宴「戦争は我々を忘れない」
奇跡的な休戦状態になり、食べ物を交換しあったりお酒を酌み交わしたりと
あちこちで交流が開始。
言葉は分からなくても皆楽しそう。
その一方で、交流を拒む者がいた・・・。
それは大切な家族を奪われた者。
命の奪い合いの中で休戦になったことは何とも美しい事だが、劇中の中の会話で
「戦争は我々を忘れない」
と言った通り、仲良しこよしなど出来るはずがない人もいる。
これが憎しみを生み、戦争がいつまでたっても終わらない理由だと思う。
人は昔から同じ所でぐるぐる回っているだけなのかもしれませんね・・・。
多くの人が”奇跡”を心から感謝したあと、それぞれ各塹壕に戻っていくが
敵であるはずの人間を名残惜しそうに振り返り、とぼとぼ歩いていく姿は見ていて耐え難かった。
このシーンが本来の人間の心という物を現していると思う。
同じ人間であり、同じ想いをもつ人間だということ。
【ココに怒り】冷たい穴を二度と掘らせるな
前日の奇跡から明けた朝、各国の指揮官が集まって「亡くなった仲間を埋葬する時間を設けよう」と話し合う。
他の映画でも目にした事がある。
これは騎士道、武士道の精神を尊重するといったもの。
この時間は互いに攻撃することはない。
敵味方入り混じっての埋葬を見ていて毎回思う。
こんな些細な時間で交わした約束を守れるのなら、最初っから戦争などするな・・・と。
この映画の場合、この指揮官に向けてでは無くもっともっと上のお偉いさん方に向かって思った。
もう二度と戻らない人を思いながら、最前線で戦っている者がその手で土を掘る。
自分が何故生きているのかさえ疑問に思ってくる者もいるでしょう。
次第に自分を責める者、感情を無くす者、怒りに支配される者。
こうして人は人では無くなっていく・・・。
大量に横たわる人とその群れ。
もう居ない人を”今でも元気”だと優しい嘘を手紙に記し、故郷にいる家族へと残す人。
もう見たくない。
もう見せない世の中にしてほしい。
一体彼らの声はいつになったら届くのか?
この光景を一部の人間のせいで起きた出来事なのが悔しい。
ここは怒りと悲しさで涙。
そろそろ私の涙腺も限界を迎えそうだわ。何パターンの涙を流させるのかしらこの映画は(困笑)
【ココが美しい】敵を自軍の塹壕に招きいれる奇跡
あまりにも仲良くなり過ぎた兵達は、戦場では有り得ない奇跡を起こす。
「今から我が軍がそちらに砲撃を開始するので、こちらに避難しませんか?」
私、頭を抱えそうになりました。
ここにはもう、本来の人間としての意味をもった者しかいない。
奇跡なんて綺麗な言葉で表現しているが、これが普通の事。
共感と優しさをもった人としてのあるべき姿です。
物語上、交流はこれで最後となります。
ショパンの別れの曲にも似た悲しい曲と共に敬意を込めた敬礼、握手をし自軍に帰って行く兵達を見守る目。
すべてが優しさで溢れていたこの瞬間を忘れてはならない。
私の心にちゃんと保存されています。もう何年も前になるが、初めてこの映画を観た時から今でもずっと。
ラストは”奇跡”が起こした”悲劇”
当然のことながら、今までの奇跡は国にとっては反逆行為。
指揮官は左遷させられ、今まで一緒に戦ってきた仲間と引き離されたりと、一気に現実に引き戻されます。最前線が動かなければそりゃバレるわな。
今まで交流してきた者と再び戦えとの命令に誰もが躊躇。
・・・撃てるはずがない。
もうほぼ家族みたいなものでしょうに。
怒りで支配されている者を除いては。
奇跡が生んだ優しさの積み重ねが、一発の銃弾によって悲劇に変わる。
また、多くの悲しみと憎しみが生まれる・・・
そして彼はこの先人生で苦悩する事だろう。
仲間を撃ったのだから。
まとめ
ラスト、敵国の「I'm Dreaming Of Home」を歌う兵士達からは
運命を受け入れると同時に、自分達は間違っていないという誇りすら感じた。
一番耳を傾けるべき人の声というのは、最前線で戦っている者、巻き込まれている者。
現実と向き合って努力し続けている者です。
約100年前の出来事だというのに、未だに争いは止まない。一部の人間の権力のせいで。
所詮人間には無理な話なのだろうか?
だったらこの日だけでもすべての生き物に、平等の幸せが訪れてほしい。
100年前のクリスマスも
今年のクリスマスも
100年後のクリスマスも
同じ優しさで溢れる世界である事を祈る。
幸せに過ごすことが、人間に与えられた最初で最後の使命だと教えてくれたこの映画は、是非とも後世に語り継いでいってほしいです。
日々、生きている事に感謝して幸せに暮らしていますか?
この世界で最も賢く、最も愚かなもの。それが人間。
この世界にメリークリスマスを。
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