予告編
日本公開年:2021年
ジャンル:SF・サスペンス
レイティング:R15+
監督:ガルダー・ガステル=ウルティア
視聴できる媒体:『Amazonプライム』『U-NEXT』『hulu』『Netflix』『ぽすれん』『DMM.com』(2023·3月11日現在)
あらすじ
目覚めるとそこは「48」層階だった。コンクリートで囲まれた物寂しい部屋にはベッドと必要最低限の物のみ。そして触れずにはいられないほど、部屋の真ん中に大きな穴が空いている。下には自分と同じような部屋でこっちを見ている者、寝ている者と様々いるようだ。底は見えない。上は確認できないが同じような設備だろう。やがて時間がたつと穴から食い散らかされた豪華な食事が降りてきた。ここは・・・何だ?
いーぬ。的総評
評価基準は「サイトマップ」の美楽映画、「いーぬ。的批評目安」よりご参考下さい。↓
注意
以下、ネタバレ含む感想がありますのでお気をつけ下さい。
視聴できる媒体は、記事投稿日の情報です。
ルールと主要人物
ルール
①穴からは「プラットフォーム」という台に乗って豪華な食事が降りてくる。
②自分の階層に台がある時だけしか食べる事はできない。隠し持って後で食べる事は出来ない。違反した場合は焼死か凍死するまで自室の温度が上下する。
③一ヶ月毎に次の階層に移動する。現時点より上に行くか下に行くかは分からない。
④穴にいる間は何をしても構わない。
⑤同居人は二人。どちらかが居なくなれば次の月、新しい住人が追加される。
⑥穴には一つだけ好きなものを持ち込んで良い。
⑦生きている者がいない階層にはプラットフォームは止まらない。
⑧18歳以下の人間は穴には入れない。
主要人物
ゴレン・・・本作の主人公。禁煙して「ドン・キホーテ」を読むために穴に自ら志願して入った。半年入れば認定証が貰える予定。最初の階層は「48」。持ち物は「本」。
トリマガシ・・・何ヶ月も前から穴にいる。ゴレンの最初の同居人。"明らかだ"が口癖の老人。持ち物は「サムライプラス(ナイフ)」。
ミハル・・・毎月プラットフォームに乗って降りてくる。息子を探しているらしいが…。かなりの武闘派。
イモギリ・・・穴の管理局で25年働いていたが自ら志願して穴に入った女性。穴が存在する意味や何層まであるのか詳しく知っている。持ち物は「ラムセス2世(犬)」。
バハラト・・・第6階層で出会う最後の同居人。筋肉隆々で人を信じている優しい人。持ち物は「縄(ロープ)」。
考察ポイント
最初の同居人が良いキャラクターなのは"明らかだ"
最初に「48」階層で目覚めてからここの穴の仕組みやルールを教えてくれるのがトリマガシという人物。この老人、何故だか愛らしい。親切とは言い難く"明らかだ"という口癖通り、理論的で良い夢はみない。それはトリマガシがこの穴にやってきた理由が大きく関わっている。
まぁ早い話、ちょっとは人生が変わるかと夢を投資して買った物をテレビショッピングの手法にまんまと羽目られたのが気に食わなく、外に物を投げた結果、偶然にも通りかかった人に当たって亡くなった。穴に入るか病院に入るかの選択を迫られ、泣く泣くここにいる。いわゆる、トリマガシにとっては監獄みたいなもの。
納得いっていないのか、この事を根に持っているようだが
そりゃあんたが悪い(笑)
この個性的なおじいちゃんと善き人である主人公との相性が絶妙に良く、打ち解けてからの日々を奇妙でヘンテコな気分になる音楽で表現している所が見ていて和みます☺️
ここのシーンの監督のセンスが好きです。
ずっとこの空間が続けばいいのに…多分トリマガシも同じ気持ちだったと思いますが、ここは"穴"。そして"48"階層。次の月になればランダムで階層は変わる。目が覚めて目にした数字は…
171階層。
ここから運命が変わり始める。
問題はただ一つ、食料。171階層まで残っているはずもない。さてここから一ヶ月どうするのか?
もう友達レベルであんなに仲の良かった二人が…というよりトリマガシが豹変してしまうシーンこそ、この映画の伝えたい部分なのだろう。
人は生きるのに必死だ。善い環境に居る者は心に余裕がある。それが当たり前で育ってきたなら下の者に手を伸ばす余裕があるだろう。だが一度でも味わった事のないほどの苦境に落ちた時、または這い上がっては落ちるを何度も経験していたら、友といえど善き人のままでいれるだろうか?これが赤の他人だったらもっと蔑ろに扱わないと断言できるか?
劣悪な環境になればなるほど、穴で言えば下の階層に行けば行くほど争いが起きる。一体どうしたらいいのか?
まるで人間社会の縮図を見ているかのようだ。この穴の本質がここから分かってきて面白さが増してきます。
それはそうとトリマガシって言いづらい😏
二人目の同居人は"穴"をよく知る元管理者
穴の中の生活も慣れてきた頃、主人公に新たな同居人がやってきた。名前はイモギリ。かつて主人公がこの穴に入る為に面接をした管理局の人間だった。
イモギリも真面目に働いてきたのに、とある出来事に憤り絶望したのか自ら志願して穴にやってきた。
顔見知りで穴の管理者だった事から、穴についての有益な情報を知る。
ポイント
①下は200階層まで。
②この穴は連帯感をもたせるのが目的。
そう言い、食事を最下層まで届けれるように上のものが下の階層の食べる分だけ取分ける。それだけを食べるよう下の階層に伝えて、それを最下層まで繰り返すようにも伝える。
う〜ん、とても理想的な事だが案の定上手くいかない。これは上の階層にいればいるほど良識ある人間でなければならない。取り分ける量の問題もある。そして下の者を説得できるほどの指導力も必要でしょう。
皆が共産主義的な考え方じゃないと上手くいかない。
これはなかなか難しい事だが、このイモギリ率いる主人公がいた階層は「33」だった為、比較的この一ヶ月は下の方も平和な方だったんじゃなかったと思う。しかし、次の月でも同じ事がおきなければ根本的に意味は無い。善行は続かなければ意味がないんだな~と思い知らされた。
ただイモギリが人として成長するにはまた別の話があって…
まず持ち物❗❗
何を考えて犬を持ち込んでるんだね❗❗(怒)
争いの標的になってしまうでしょうが!!😤
自分の事しか考えてない所が出てて嫌でしたね:-)
主人公が
「犬を持ち込むのは賢明じゃない」
と言った言葉に激しく同意!!
犬好きとしては許せぬ( `ー´)ノ
あと一つは悲観しすぎな所。
この穴に入ってきた理由も自分は真面目に働いてきたのに何故なのか?と言うような理由な事が挙げられると思う。厳しい言い方になるが絶望しすぎ。裏切らない愛犬を穴に連れ込むのもここで何があっても受け入れ終わらせる事すら考えての事だろう。
その弱さが問題。そして犬に失礼。
もし同居人が悪人であっても穴の仕組みが聞いていたものと違ったとしても最後まで生きる為に諦めない心を持つ事がイモギリが成長する為の穴だったと思う。
次の月、主人公と目覚めた階層は…
202階層。
イモギリがしてきた行動は受け継がれ、協調性は生まれているか?
聞いていた話とは違う、200階層以下の存在に絶望しないか?
散々イモギリの事を言ったが、この階層になった時のイモギリの行動を否定も肯定も私はしない。人間らしい選択だと思った。
でも犬の件は絶対許さないからねっ‼😤
最高に馬鹿な二人の聖人
次の月、主人公が目覚めた階層は…
6階層。
安堵する主人公の横で騒がしく上の階層に呼びかけているのが最後の同居人、バハラトとの出会いだった。
このバハラトと言う人物は人を信じすぎている節があるのか、持ち物は「縄」。
上の階層に居る者達に上げてもらう為。
なんと純粋な心なのだろうか。良い人ばかりではないというのに。
人を信じる心を持つ者が同居人であると知ると主人公の心に光が灯りだす。
この者と一緒なら食べ物を最下層まで分けれるかもしれない。
今思えば上に上がりたいのも、1階層から食べ物を分け与える為のロープというか縄だったのかもしれないが、主人公から上に上がる為に下に降りないかという提案に喜んで乗ってくれる辺り、この二人は運命を変える聖人だなと思った。
誰もが上の立場になりたいと思う。それはその資格がある人物か?庶民の声を聞き自分に何ができるか考え、行動できる人物だろうか?そうでなければ極端な不公平は無くならない。共産主義ほど完璧な平等じゃなくていい、せめて笑って暮らせるくらいの公平感が続けばいいなと思った。
この二人は上に立つべき人間なんだろうな。第6階層という"恵まれた社会地位"からより多くの人が幸せに過ごせるように動けるのだから。
留まらないという選択が素晴らしい。
変化は自然には起こらない
プラットフォームに乗り、下へ下へと降りていく。すると、これでは駄目だと気づくように助言される。
このやり方では次の月になったらまた元通りになる。穴の仕組みを根本的に変えなければ。
どうすれば?
第0階層で働く者達に気づいて貰えばいい。
…確かに。この穴の仕組みでいいと考える第0階層のもっと偉い上の人物に訴えた所で変わらない。頭の柔軟さにも欠け、いざとなれば自分の事しか考えないだろう。協調性などとうたい、残忍な穴のシステムを採用し続けているのだから。穴で何が起きているかなどそれほど真剣に考えてないのでは?
弱き者の声はいくら大きくても理解しようとしない者には意味がない。その側近達に気づいてもらう事が第一歩。
その為にとある料理に一切手を付けず第0階層に返す事に。
料理人達(側近)は何て思うだろう?
穴にいる者が協力、必死にして残した事に気づき、この穴のシステムが崩壊したのではないかと疑問を持ってくれるだろうか?もしくは残忍な事だと認識してくれるだろうか?
かなり賭けに出た行動だろうが、第一歩になる事が重要。
とある料理を守りつつ、下へ下へ降りていく。
行動することに意味があるんだね。
まさかの333階層に居た者の意味
主人公達の試みに協力をお願いするが、料理に群がってくる者が残念ながらいる。そういうものは拳で教えながら下へ降り続けていくうちに主人公達は身体がボロボロに。当初予想していた250階層を過ぎてもまだ下がる。すると、誰も居ない333階層でプラットフォームが止まった。生きてる者が居なければその階層には止まらない。よ〜く周りを見回すとなんと子供がいた!この穴には18歳以下は入れないようになってるはずだが何故?
もう分け与えれる食料はずっと守ってきた「パンナコッタ」。
唖然としてる主人公をよそに、無情にもプラットフォームは動き出し下に降りていってしまった。
思い出してほしい。この穴のルールを。料理はプラットフォームがある時しか食べる事ができない。隠しもっている事も違反になる。
焦る主人公達。…が、暑くも寒くもならない。
何故…?
子供は、無垢な生きものだから?
一番弱く、争いを知らない子供は希望そのもの。赤子だったならば尚更言葉は人に届かない。守るべき者にはルールが適用されない穴からのメッセージであり、この映画からのメッセージだったのかなと考えさせられた。
今を変えるには未来への希望が必要。希望そのものの子供を第0階層に返す事で情に訴えかける事ができるか?この穴の実態を考えてくれるきっかけになるだろうか?そう主人公が思ったかはさだかではないが、子供をプラットフォームに乗せ、第0階層へと返す事に決めた主人公を尊敬する。子供に助けられるのが大人ならば、子供を守るのは大人の使命でしょう。
こうしてプラットフォームに少女を残して最下層で台から降りた主人公。
これは人生から幕を下ろしたと考えていいのかな?
助かるさきっと。
願わくばその想いも届いてほしい。
まとめ
穴の中で喜んだり、絶望したり、争ったり、話し合ったり、困惑したり、究極の選択をしたりとまさに人間の一生を見ているかのような映画でした。
とても観てる側にメッセージを送ってくる系の映画なので、一回見るだけじゃ意味が分からなく、何回も見たりじっくり考える事でじわじわ面白みを増してきました。めちゃくちゃ頭使いましたが(笑)
笑い所もちゃんとあって、最後少女をプラットフォームに乗せて0階層に戻る時の勢いが凄すぎて、G(重力)どうなってんだ?大丈夫か?とツッコミ入れたくなったり(笑)
でも私は"カタツムリと呼ぶな" "私の口癖を使うな" がグッときましたね~。
主人公の心の中にも私にもトリマガシの存在が残り続ける事でしょう。
穴の中で出会わなければいいコンビになったのかな?
ふ〜疲れたけど面白い映画だった〜😊