公開年:2016年
ジャンル:ホラー
レイティング:R16+(Amazonプライム参考)
視聴媒体:Amazonプライム
監督:ダニエル・カストロ・ジンブロン
あらすじ
外には音に反応する『怪物』がいるという。時折聞こえる轟音に怯える一家は外に出る事なくひっそりと小屋で過ごしていた。ある日、父と兄が狩猟の為に外出したっきり兄だけ帰って来なかった。弟のアルヘルは、父の静止を振り切り兄を探しに外の世界へ飛び出すが・・・
いーぬ。的総評
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注意
以下、ネタバレ含む感想がありますのでお気をつけ下さい。
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主要人物
アルヘル・・・三人兄妹の次男で本作の主人公。好奇心旺盛で外の世界に興味を持っている。兄妹思いで優しい少年。料理担当で狩猟で取ってきたものをさばける腕前を持つ。
マルコス・・・弟妹の長男。二十歳前後かと思われる。幼く感じるのは他人との接触がないからかも。家族の中で父と共に外に出られる唯一の存在。ある日狩猟に出かけるが父と共に帰って来なかった。以降、行方不明。
ルチア―ナ・・・末っ子の女の子。病気がち。家の中で遊ぶ事しかなく、お絵かきや昆虫採取が趣味。言いつけはちゃんと守っている。
父さん・・・一家の主。絶対的な立場。自室、玄関、子供達の部屋に毎日厳重な鍵をかけ、『怪物』から子供達を守っている。
厳重すぎる鍵。父親は何から守っている?
もう既に冒頭から不審な場面を見つけてしまう。外に出たら怪物に襲われるという設定は良い。音に反応する為、家の近くに現れたら窓に木の板をはめ、物音を出さない徹底ぶりだ。
しかし寝る時間になったら地下にある子供部屋を厳重すぎる南京錠で締める。
私はこれに不信感を抱いた。
『怪物』というものがどういうものかこの時点では分からないが、何だが怪力なイメージがある言い方な気がした。だとしたら、南京錠如きで大丈夫なのか?無意味な気がしてならない。
守る為というよりまるで子供を閉じ込めているように見える。外に出さないように…
だとしたら何故か?
この謎が終盤まで引っ張っていってくれます。そこが面白い所でもありますが、あまりにも長すぎてラスト付近がダラダラとした印象でいて、種明かしも自分好みじゃ無くてとても残念でした。
以下は私なりに考察してみました。
考察①兄は事実を知っていた?弟も薄々気づいていた?
父と狩猟に出たっきり、ある日行方不明になった兄マルコス。
どう考えても父が怪しいのだが、森で出会った者達の出現でどう展開が変わっていくのか楽しみでしたが、”あの子”の言う通り父さんの発言も加味すると、やっぱり父がやったのではないかと思う。
もしくは狼かな。
マルコスが居なくなってから変な夢を見るようになる主人公アルヘル。
父への不信感からか外の世界が突然”怖い”より”気になってしょうがない”と思うようになる。
兄を探す為だと言って家から脱出しようとするのだが兄の件が引き金になっただけなのかな?と思った。薄々変だと気づいていたんじゃないかな?
・怪物は怖いが実際は見た事が無いこと
・父の部屋に絶対に入っては駄目な理由
・子供部屋に鍵をかける理由
・目の見えないおじいさんが幻覚として現れるようになったのはアルヘルの潜在意識が目覚めるように働きかけている事
・そして大事な話があると言った後に消えた兄
何かを思い出しそうな描写と対峙している演出が、物語を複雑にしていって面白かったですね。
無意識に過去を思い出さないように、今の状況に気づかないようにしていたのかもしれませんね。
彼もまた父さんの様に家族とずっと一緒に居たかったのかな・・・。
考察②怪物の正体は?
私は息づかいからして狼じゃないかな~と思っていますね。
勿論父が何かしら操作してる事には違いないでしょうが。
例えば外に餌を撒いておくとか、おびき寄せる音を出しているとか、あの人なら細工は得意でしょうからね。
シンプルに全て父の自作自演で怪物は存在しないとなると狼が必要以上に存在感があるので、そこも気になってしまいます。
ただ狼の生態を調べるとちょっと面白くて、
・縄張り争いが死因になるくらい激しい本能
・狩猟に特化している
・人里離れた場所に住む
・核家族で移動する
なんだかこの一家の事を指しているように見えてきませんか?
父=狼ともとれますよね。
狼があくまでこの映画の象徴だっただけだと言われれば納得です。
ラストシーンで父さんがど派手にやられているのですが、それも狼の仕業かなと思っています。
最後は自分自身にやられたという風に解釈しています。
心の成長を無理やり止め、引き止め続ける事はできないと。
考察③娘に優しすぎる父
単に女の子だからと言われればそれまでの事ですが、一番年下の娘、ルチアーナだけは妙に溺愛しているのが少しひっかかりましたね。
まるで”母親に似ているから”のように感じます。
そもそも何故母親がいないのか。
いないからこそこんな状況になってしまったのではないか?
病気で辛い妹の為に、主人公がレコードを聞かせてあげてるシーンがあるのですが、その光景を愛おしそうに眺める父さんの表情から、そのレコードがとても大切な物と分かります。もしかしたら奥さんとの大切な思い出が詰まっているのかなと。
おそらくですが奥さんと死別、もしくは離婚されたのを期に家族全員で一緒に居たい、居るべきという事に囚われてしまった父さんによる物語なのではないかな。
まだ幼かったであろうルチアーナは母親の顔を知らないが、うっすらと記憶にあるアルヘルと、事実を知っているマルコスというのが背景にあるような気がしてならない。
もしそうだとしたら、父さんはとても寂しい人で家族離れ離れになる事がどんなに悲痛な事かを伝えたい映画だったのかもしれない。
まとめ
一に考察、二に考察、とにかく考察必須の映画でした。人によって色んな物語へと変化してしまうのが面白いととるのかモヤモヤしてしまうのかが分かれそうです。
全く考察できなくもないので、あえてそう作ったのだと思いますが、やっぱり決定的なシーンというのは私は欲しい。ふわっとした終わり方は好まないですね。
中盤以降から怪物の存在や兄の行方は多分分からないまま終わるんだろうなと薄々勘づけてしまって残念でした。
面白くでも怖くでも何通りの終わらせ方があった中で、あの終わり方は勿体ないなと思ってしまいましたが、家族を想う親の姿など、「家族」をテーマにしたミステリー感強めのお話が見たい方はおすすめだと思います。
最後に、父さんが急に娘へプレゼントを渡すシーンですが…
父さん、そのプレゼントちょっと怖い!!